『エクソシスト 信じる者』ネタバレ感想・レビュー_50年ぶりの続編は信じるのが難しい

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エクソシスト 信じる者のアイキャッチ レビュー

今回は2023年12月1日に公開された映画『エクソシスト:信じる者』のネタバレ感想をお届けします。
本作は1973年に公開された映画『エクソシスト』の続編として制作されました。
1作目の後は1977年に『エクソシスト2』が制作されました。
しかし原作者の「ウィリアム・ピーター・ブラッティ」が満足せず、正当な続編と認めませんでした。
それから時は経ち、1990年に原作者本人が監督と脚本を担当した「エクソシスト3」が公開されました。
その後も2004年には『エクソシスト・ザ・ビギニング』が、2016年からはドラマ版『エクソシスト』などが公開されましたが、本作は1作目からの政党続編ということで、要するに今話した2作目以降はすべてなかったことになりました。
そんな本作の監督は2018年から始まった『ハロウィン』3部作を監督したデヴィッド・ゴードン・グリーンです。

【原題】
The Exorcist: Believer
【日本公開】
2023年12月1日
【監督】
デヴィッド・ゴードン・グリーン
【キャスト】
レスリー・オドム・Jr、リディア・ジェリット、オリヴィア・オニール、ジェニファー・ネトルズ、ラファエル・スバージ、エレン・バースティン、etc
13年前にハイチの大地震で妻を亡くしたヴィクターは1人娘のアンジェラと暮らしていた。
ある日の放課後、アンジェラは友人のキャサリンと森へ入り降霊術を行う。
約束の時間を過ぎても帰ってこない娘を心配したヴィクターとキャサリンの両親は警察の助けを借り、2人は無事発見されるが様子がおかしいことに気が付く…。
ここから先は『エクソシスト 信じる者』のネタバレを含みます。

不意を突かれる恐怖

まず、本作の怖さについてお話しします。
本作はホラー映画としての怖さがとてもありました。
普通に怖かったです。
特にジャンプスケアが頻繁に使われていました。
そして環境音や日常の何気ない音が通常よりも大きくなっています。
これはオリジナルの『エクソシスト』にも見られました。
1作目で群衆の声や犬の鳴き声、何気ない生活音がどれも強調されていました。
そのため本作も1作目を意識して意図的に行われていたと思われます。
このような音を使った恐怖演出は本作にたくさんあり、いくつかの場面では飛び上がるくらい驚いたこともありました。
たとえば、本作では二人の少女が悪魔に取り憑かれますが、普段の優しそうな少女から次第に肌がただれて傷の増え、そしてカサカサの唇になっていく様子は怖ろしいです。
このメイクも1作目のリーガンと同じような雰囲気になっていましたが、技術が上がった現代のより恐怖の増したメイクはとても怖かったです。
ここまで怖さを話してきましたが、それが全て上手くいっていたかというとそうでもありませんでした。
例えばジャンプスケアです。
最初に言った通り本作ではジャンプスケアが多用されていました。
これ自体は全然歓迎で、むしろホラー映画なので適切なタイミングで使えるととても効果的です。
しかし本作はとにかく数が多いです。
そしてそれらは適切なタイミングというよりも、詰め込めるだけ詰め込むやり方でした。
例えば誰かが家に入ってくるシーンがあったとして、そのようなシーンではノックやチャイム、足音など、とにかく使えるもの全てがジャンプスケアになっているような感じです。
いくつかの場面では効果的でしたが、使われすぎていて若干うるさく感じました。
これは最初に話したように環境音も大きくなっているのでなおさらです。
したがって、恐怖演出の面では間違っていないと思いますが、ワンパターンで一定の方法で恐怖を演出しており、びっくりするときもありましたが、そこには不快感や邪魔な感じもありました。
ただ、結構怖かったので恐怖の面では良かったと思います。
実際、最後のエクソシズムは映像的な迫力もありますが、特に二人の子役の変化は素晴らしいと思います。

 

オリジナルからの継承

本作はテンポが少し悪い印象を受けました。
これは、良く言えば前作の特徴を継承しているとも言えますが、悪く言えば現代に合っていませんでした。
そもそも映像作品というのは時代とともに変化していきます。
10年前の常識が今はもう時代遅れなんてことは全然あります。
そのため、時代に合ったペースやスタイルが求められる傾向にあります。
これはストーリーだけの問題ではなく、カットやレイアウト、そして作品当たりの情報量などです。
まず、昔の作品はカットの数が少ないことが多いです。
カットというのは、ショットとショットを繋ぐ「場面の切り替え」です。
1作品当たりのカット数は映画のジャンルにより変わると言われていますが、全体的に昔の作品より最近の作品の方が多い傾向にあります。
それは、昔の撮影は現代と違ってフィルムが使われていたことや、そもそも昔の平均的なカット数が少なく、みんなそれを普通だと思っていたことなどが考えられます。
フィルム撮影は撮り直しが簡単にはできなかったので、比較的長回しで撮影されることが多かったです。
さらにカメラの動きも制約されていたため、激しい動きは困難でした。
そのため『エクソシスト』1作目も例外ではなく、現代に比べてカットと動きが少ない作品でした。
しかし、本作は『エクソシスト』の1作目のようなテンポや特徴を引き継ごうとしているように感じました。
例えば、本作は全体的にカメラワークが定まっていないように感じました。
現代の映画ではシーンや対話の際、カメラワークはしっかりと定められることが多いですが、本作では昔の作品を引き継いでいるのか、昔の作品の特徴を再現しようとしているのか分かりませんが全体を通して不安定でした。
もちろん現代の作品でもシーンを強調させる演出として不正確なショットが使われることはありますが、それは作品のほとんどの場面で馴染みのあるショットが使われていて初めて差別化できるものです。
しかし本作では特定の箇所だけでなく全体を通して不安定なショットが続いました。
そして同時に無駄に長いショットもありました。
これは先ほど話したフィルム撮影の困難に繋がりますが、昔の映画は比較的長回しが多いです。

 

それを踏まえたうえで本作を振り返ると、本作は昔の映画のようなシーンが多く見られました。
適切なタイミングであればそれは効果的ですし、ホラーであれば長回しは恐怖を煽る効果的な手法です。
しかし本作は先ほど話したジャンプスケア同様、その数が気になるくらい多かったです。
それは『エクソシスト』の特徴を捉えれているとも言えますが、時代遅れにもなっています。
カットの多い現代の作品に慣れてしまうと、カットの少ない昔の作品はテンポが遅く感じてしまう人もいます。
それが昔の作品は退屈に感じる人がいる理由の1つだと思いますが、本作ではその特徴が表れており、そこには懐かしさではなく、違和感だけがありました。
映画をアイスクリームに例えると『エクソシスト』1作目は「バニラアリスクリーム」です。
シンプルな土台で、今でも当時のファンを多く抱えています。
そしてその後に作られた作品は「クッキー&クリーム」や「アイスクリームサンデー」など、シンプルなバニラアイスをベースにアレンジが加えられたものです。
そして現代に生きる人は「アイスクリームサンデー」のような土台が分からないまでに装飾されたアイスに慣れているわけです。
そういった人が昔のシンプルなバニラアイスを楽しめるかは微妙で、それを楽しいと感じるのは当時を生きた人や思い出補正がかかっている人か、私のような映画オタクが多いです。
なので、現代で映画を作るならそれは現代にマッチしたものになっていないと多くの期待外れを生むわけですが、本作は編集において時代遅れ感を感じ、それがテンポの悪さに繋がっていました。
それでいて、1作目の印象的な音楽やそれこそリーガンの母親のクリス・マクニールを登場させたりと『エクソシスト』のおいしい部分をトッピングしていましたがベースがいまいちなので『エクソシスト』の要素が特段目立ってしまっていました。
もし本作が『エクソシスト』と関係ない新作ホラー映画だとエクソシスト味を感じる構成に違和感がありますし『エクソシスト』の続編だと言われるとおいしい部分だけをとってつけたような決して良いとは言えない作品になっていました。
1作目を思わせるような精密検査や精神科などもありましたが、どれも真似事でしかなく、それらを本作特有のものに落とし込めていませんでした。

 

さいごに

ということで『エクソシスト:信じる者』のネタバレ感想をお届けしました。
今回は普段の記事よりも短くなってしまいました。
というのも正直本作は今年最低レベルに楽しめない作品だったからです。
今回の感想記事は過去一手が進みませんでした。
本当に最悪だった作品は逆に手が止まらなくなるのですが、本作は最悪じゃないんですけど、言いたいことが無いくらい印象に残りませんでした。
それくらい本作を楽しめませんでした。
ただ、本作は3部作ということでまだ希望はあるかもしれませんね。