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ブラック・ミラー シーズン6BLACK MIRROR S6

『ブラック・ミラー』シーズン6|ネタバレ感想・解説|全5話をエピソードごとに

この記事は結末に触れます。 物語の展開や結末に踏み込んで書いています。まだ観ていない方はご注意ください。

CONTENTS
  1. 第1話『ジョーンはひどい人』
  2. 第2話『ヘンリー湖』
  3. 第3話『ビヨンド・ザ・シー』
  4. 第4話『メイジー・デイ』
  5. 第5話『デーモン79』
  6. シーズン6全体をどう見るか
  7. シーズン7とその後はどうなったか
  8. シーズン8を待ちながら

2023年6月15日にNetflixで配信。 シーズン5から4年ぶりの新シーズンで、全5話です。

『ブラック・ミラー』はイギリスで始まった1話完結のアンソロジーで、どのエピソードから観ても成立します。 近未来の暗い世界を描いて、観たあとに何かを考えさせる。 今回もそうでしたが、いくつかのエピソードは近未来ですらありませんでした。

ここから先は各エピソードの結末に触れます。

第1話『ジョーンはひどい人』

Netflixによく似たストリーム・ベリーという配信サービスに、自分の人生を勝手にドラマ化された女性の話です。

うまいと思ったのは、事の発端を利用規約にしたところです。 規約を隅から隅まで読む人はほとんどいません。 そこを逆手にとって最悪の事態を起こす。 ストリーム・ベリーと契約したジョーンも、肖像の利用を許可したサルマ・ハエックも同じです。 何が起きても「規約に書いてある」で済んでしまう。 これは怖い。

弁護士に相談する場面で例に挙がる、スマホを置いて会話した内容の広告が表示されるという現象。 あれも身に覚えがあります。 同じ経験をした人は多いのではないでしょうか。

いちばん驚いたのは、これが仮想世界の話だったと分かるところです。 しかもその層が想像以上に厚い。 アニー・マーフィが演じるジョーンのさらに外側に、本物のジョーンがいました。 考えてみれば当然です。 私たちが観ていたNetflixの『ジョーンはひどい人』の主人公も、トラブルに巻き込まれるジョーンという女性なのですから。

現実のほうが追いついてきた話

俳優の肖像をAIとして使うという題材は、配信当時に起きていた俳優組合のストライキの争点そのものでした。

米Deadlineが組合員に行った取材では「俳優たちは『ジョーンはひどい人』を未来のドキュメンタリーととらえている」という声が出ています。 ストライキの対象だったNetflixが、その直前にこの作品を配信していたことになります。

その後どうなったかも書いておきます。 このストライキは2023年7月14日に始まり、同じ年の11月9日に終わりました。 そして同年12月5日、俳優たちの投票によって新しい取り決めが正式に決まりました。

合意には、デジタルレプリカに関する取り決めが入りました。 デジタルの複製を作るとき、またAIで演技を改変するときには、本人の同意と対価が要る。 契約中でない俳優の複製を作る場合も、本人の同意と個別の交渉が必要になります。 さらに、ある作品のために作った複製を別の作品で使い回すには、あらためて同意と追加の対価が要ります。

サルマ・ハエックが自分のイメージを損なう映像を流されて激怒した、あの場面に対する現実側の答えが、ここにあります。

第2話『ヘンリー湖』

こちらもドキュメンタリー風でした。 前半と後半で雰囲気が大きく変わり、その温度差で風邪をひきそうでした。

前半はかなりゆっくり進みます。 監督志望の男性が母親に彼女を紹介し、3人で廃れた街を巡りながら、そこで起きた不幸な事件の話を知っていく。 この遅さが、後半の急展開を引き立てました。

母親の事件への関与が明らかになってからは、似た作品と比べても駆け足で進みます。 終盤は衝撃と展開の連続で、画面に引き込まれました。

一見とても優しそうな人間が実は事件に関わっている、という筋自体はこれまでにもありました。 それでも効くということは、結局これが観客を引き込む正解なのだと思います。 誰かにとっての不都合は、別の誰かにとって都合が良い。 そういう話でした。

第3話『ビヨンド・ザ・シー』

出ました、これです。

『ブレイキング・バッド』のジェシー・ピンクマンで知られるアーロン・ポールが主演ということで、公開前から期待していました。 まさかシリーズでも上位に入る胸糞エピソードだとは思いませんでした。

『ブラック・ミラー』は後味の悪い作品が多いのですが、これはその中でも良い意味で最悪です。 観たあとしばらく放心状態になりました。

デイヴィッドがクリフのレプリカを借りたあたりで、これはそういう話になるのではないかと嫌な予感がしていました。 もっと嫌な結末が待っていました。 冒頭でデイヴィッドの家族が目の前で殺され、最後はクリフの家族が殺されて終わる。 最初から最後まで胸糞を更新し続けます。 この展開に説得力を持たせるために1時間20分という長さを取ったのも納得です。

第4話『メイジー・デイ』

これまでの『ブラック・ミラー』とは明確に違うテイストでした。

シリーズの土台にあったのは、近未来のテクノロジーが引き起こす不気味さです。 ところがこのエピソードは、近未来よりオカルトの色が濃い。 そもそも近未来の描写がありましたか。 純粋なオカルト作品は、これまでの『ブラック・ミラー』には無かったと思います。

話の運びも意表を突かれました。 ひき逃げをした俳優をパパラッチが精神的に追い詰めていく話かと思っていたら、狼人間になります。 予想していたものと違いました。

中身は少しあっさりしています。 良く言えば、他のエピソードと比べてすっきり終わる。 理由は展開と、主人公の意志の持ち方にあると思います。 主人公がどう動くかは物語の空気を大きく左右しますが、このエピソードの主人公は迷いが少ない。 そのぶん、観たあとに引きずるものが残りませんでした。

『ブラック・ミラー』に何を求めているかで、評価が分かれるエピソードだと思います。 後味の悪さを求めていた人には物足りず、一本のホラーとして観れば楽しめる。 そういう位置にあります。

第5話『デーモン79』

世界の滅亡を止めようとする話はいくつもありますが、その手段が殺人というのは一風変わっています。 そして止められずに終わるところは、いかにも『ブラック・ミラー』らしい。

それでも、いまひとつハマりませんでした。

パーパ・エッシードゥが演じる軽いノリの悪魔は好きになりましたし、滅亡してしまう結末も納得はできます。 ただ、この作品が何を言おうとしていたのかが分かりませんでした。 深く考えさせられることもありません。

娯楽作品だと言われればそれまでです。 しかしこれまでの『ブラック・ミラー』は、後味が悪いぶん妙に考えさせるものが多かった。 それらと比べると拍子抜けでした。 最後に悪魔と永遠の忘却空間へ歩いていくエンディングも、シーズン3の『サン・ジュニペロ』のような余韻には届いていません。

シーズン6全体をどう見るか

4年ぶりのシーズンとして、期待は裏切られませんでした。 後味の悪さで殴ってくるエピソードも、記憶に残るエピソードもありました。

一方で、引っかかったことがあります。 SFを土台にしていないエピソードがいくつもあったことです。 ヘンリー湖もメイジー・デイもデーモン79も、テクノロジーの話ではありません。 このシリーズのテーマが変わっていくのか、それとも一時的なものなのか。 そこが気になりました。

シーズン7とその後はどうなったか

シーズン7は2025年4月10日に配信されました。 全6話です。

テーマが変わるのかという疑問への答えも、ある程度出ました。 シーズン7には「宇宙船カリスター号: インフィニティの中へ」が入っています。 これはシーズン4の「宇宙船カリスター号」の続きで、シリーズで初めて作られた続編エピソードです。 毎回まったく別の話をするアンソロジーだったこのシリーズが、初めて過去作に戻ってきたことになります。

そしてシーズン8も決まっています。 2026年1月にオーダーされました。 配信日はまだ発表されていません。

シーズン8を待ちながら

4年待って、殴られました。 『ビヨンド・ザ・シー』の後味は、シリーズの中でも上位に残ります。 『ジョーンはひどい人』は、配信された数か月後に現実のほうが追いついてきました。 このシリーズにいちばん期待していたのは、たぶんそういうところです。

テーマが広がっていくことへの戸惑いは、いまも少し残っています。 ただ、シーズン7で過去作の続きまで作ったのを見ると、方向転換ではなく、やれることを増やしている最中なのかもしれません。 シーズン8がどちらに転ぶのか、待っています。