『シークレット・インベージョン』ネタバレ感想_ヒーロー無しでフューリーに何ができる

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シークレット・インベージョンのアイキャッチ レビュー

こんにちは、シネマトレンドです!
今回はディズニープラスで配信中のドラマ『シークレット・インベージョン』のネタバレ感想をお届けします!
本作はこれまでMCUを支えてきたニック・フューリーが主人公のドラマシリーズです。
『キャプテン・マーベル』に初登場した、姿を変えられるスクラル人の地球侵略がひそかに始まっていたというテーマで展開されていく本作は、誰が本物でだれがスクラル人かわからない、誰も信じられないので毎回まさかの展開に驚かされました。
ただ、物語の展開は満足のいくものではなく、特に圧倒的な描写不足だったのが気になりました。

この記事の内容はYouTubeにも投稿しています。
動画では実写メインでレビューしているので、映像でご覧になりたい方はこちらをご覧ください!

ここから先は『シークレット・インベージョン』のネタバレを含みます。

これまででも有数の駄作

まず感想の結論から言うと、本作はMCUだから見れたようなものでした。
全体的に中途半端にまとめられており、エピソード数も全6話なのに加えて後半は40分以下というとても短い時間でしたが、それで中身のある物語を描き切ることもできていませんでした。
本作の重要なテーマであった、スクラル人の居住地の提供やグラヴィグとの決着も納得できる形で終わらなかったです。

そのため、本作がもしMCUじゃなかったら最後まで観るのはとても大変だったかもしれません。
しかし、同時にMCUじゃなかったらエピソード数ももっと増えて、より説得力のある物語にできていたかもしれませんね。
圧倒的なエピソード数不足だったので、きれいに完結したところを探すのが難しいくらいです。
最近のMCUは映画とドラマを含めても1年に公開される作品数が尋常じゃないので、それが結果的に1シリーズあたりのクオリティを下げることになっていると思います。

本作で扱われた「知らない間にスクラル人が地球を侵略してきていた」というテーマはとても興味をそそられますし、もっと丁寧に描けばより良いものにできたと思うと残念です。

 

AIを使ったOP

本作の中身を話す前に、まずは議論されていたオープニングについて少しお話します。
本作のOPにはAI生成映像が使われていました。

この手法は、本作に登場するスクラル人が人に化ける特徴をうまく表現していると思います。
本作ではスクラル人は国の主要人物などに入れ替わっており、これは、今後人間の仕事を奪うと言われているAIにとてもよく似ています。
そのため、個人的にこのAIを使ったオープニングというのは、スクラル人を彷彿とさせており、本作に合ったものになっていたと思います。

ただタイミングがとても悪かったです。
AIは今年に入ってから成長がとても早く、例えばChatGPTの登場や、多くの人が使っているSNS「X」でもAIを活用する動きが出てきています。
他にも、Netflixは「AIプロダクトマネージャー」という役職を募集しており、その年俸は最大でなんと日本円で約1億2600万円になるといわれています。

そしてこの問題は脚本家や俳優も無視できないもので、例えば現在進行中の脚本家のストライキや俳優組合のストライキでは、AIの規制を求める声も含まれています。本作の公開タイミングで脚本家のAI使用に対する規制要望が強まっているという点で、このオープニングを使用したのはタイミングがあまり良くなかったと思います。
確かに画期的な手法ではありますが、このタイミングでは批判を受けることも避けられなかったでしょう。
もしタイミングが違えば、そうした問題も回避できたのかもしれません。
AIは今成長がとても速く、ルール作りも追いついていないので、よい着地点が見つけられるといいです。

 

中途半端な物語

本作は、結局中途半端なまま終わってしまったと感じました。第一話から掲げられていた目標は、スクラル人の故郷を見つけることであり、彼らが安心して本来の姿で地球で暮らせる世界をフューリーが提供するということでしたが、結局それが果たされることなく終わってしまいました。
そのため、第一話から掲げられていたメインテーマが回収されずに終わってしまい、何とも消化不良でした。

ガイアの母親の死やタロスとグラヴィクの決別、グラヴィクがフューリーに対しての信頼を失っていく描写など、スクラル人側の過去がほとんど描かれなかったのも気になりました。
本作で描かれたのは地球を侵略しようとするグラヴィクと、それを阻止しようとするフューリーですが、後で話しますが、この問題はフューリーにも非があると思うので、こうなる過程が詳細に描かれなかったというのは物語が中途半端になった要因の1つだと思います。

物語の終盤でフューリーが地球でのスクラルジンの生存が難しいと判断し、実は裏でクリー人との交渉をしていたと明かすシーンがありましたが、これも急に出てきたようなもので、それまでクリー人との交渉の話が全く描かれてこなかっただけに、突然の展開に感じられました。
このような全体的にとってつけたような感じが強く、物語のバランスに欠けていた印象です。

本作では地球に居場所のないスクラル人の苦悩が描かれます。
ニックはスクラル人の居住地を見つけるために動くと約束します。
ただいまいちスクラル人の苦悩に説得力に欠けるのが、地球にはすでに宇宙人の国があるということです。
それがニュー・アスガルドです。
この国は『ソー:ラブ&サンダー』でも分かるとおり観光業にも力を入れており、地球人も訪れています。
さらに本作に登場したリットソン大統領はこのニュー・アスガルドと貿易協定も結んでいるのです。
他の宇宙人と好意的な関係を築いていたリットソン大統領がいることを考えると、それこそスクラル人の居住地が無いのはニックが音信不通で宇宙にいたことが原因だと思えてしまいます。

シーズン2の制作が予定されているかは分かりませんが、少なくともシーズン1においては、物語がほとんど収束せずに終わった点が非常に消化不良でした。
もし続編が制作される場合は、より詳細な物語の展開にしてほしいです。

 

ガイアの登場と今後

本作にはエミリア・クラーク演じるガイアが登場しました。
エミリアといえばゲーム・オブ・スローンズで知ったという人も多いのではないでしょうか?
ゲーム・オブ・スローンズではとても印象的なキャラクターを演じていたので、本作のキャストが発表された時点で私はとても楽しみでした。
本作でエミリアが演じたのは、タロスの娘のガイアです。
そしてこのガイアは本作でも特に目立った活躍をしていました。

もともとグラヴィク側だったガイアですが、母親の死の真実をきっかけにフューリー側に着くことになります。
ただこの過程はさっき言った通り雑でした。
ガイアとグラヴィクがどれくらい一緒にいたのかわかりませんが、疎遠だった父親の一言ですぐにグラヴィクを裏切るのは少し説得力に欠けます。
ただ、これによりフューリー側になったガイアですが、ガイアは本作を通して想像以上の力を手に入れました。
なんとMCUの多くのキャラクターのDNAを使ってスーパースクラルになりました。
これにより、グルートやゴースト、コーグ、そしてヴィランのエボニー・マウの能力も手に入れました。
そしてその中にはキャプテン・マーベルの能力もあります。
キャプテン・マーベルといえば能力が強すぎて、エンドゲームでは最終決戦に途中から参加することになっていましたが、ガイアは他の多くのキャラクターの能力も使えるようになったため、ある意味キャプテン・マーベル以上に強い存在になりました。
これはさすがにオーバーパワー過ぎるので、今後ガイアがどのような扱いになるのか気になります。
そしてこのガイアは最終的にフューリーではなく、MI6のソーニャと協力することになりました。
最近では『ファルコン&ウィンターソルジャー』や『ブラック・パンサー:ワカンダ・フォーエバー』に登場したヴァレンティーナも、ジョン・ウォーカーやエレーナに接触して新しいチームを作ろうとしていましたが、今後はアベンジャーズ以外のチームがいくつか出てきそうですね。
これらのチームとは手を組むのか、それとも対立するのか?そこも気になるところです。

 

ニックフューリーの罪

本作ではニックフューリーの過去の行いが明かされました。
『キャプテン・マーベル』で済む星を失ったスクラル人に対して、スパイとして活動してもらうのと引き換えに住処を与えるという取引をしました。
しかし、今のMCUを観てもわかる通り、スクラル人の居場所は地球には無く、何なら約束をした張本人のニック・フューリーは宇宙に行って音信不通になっていました。
正直、甘い話を餌にスクラル人を子供のころからスパイとして使い、結局約束を守らずに音信不通になるのはさすがに無責任だと思います。
これまでニックフューリーの功績だと思われていた部分に陰ながらスクラル人の活躍があったことも考えられるので、グラヴィクのまでとはいかなくとも、多少の不満というのはあってもおかしくありません。
そして本作ではたびたび人種問題の話がありました。
例えば黒人専用車両の話やローディとの話などです。
肌の色で迫害を受けてきた歴史があるからこそ、社会に居場所がないスクラル人に対して助けようというある種の仲間意識的なものがニックの原動力になるのかと思いきや、約束を放棄して宇宙にこもるのでは何も説得力がないです。
今回グラヴィクが計画していたものは地球に大損失を与えかねないし、それこそ地球の危機に対処するアベンジャーズが出てきてもおかしくないものですが、その原因になったニックの行動を考えると、本作を通してもニックをただの善人と考えることは難しいでしょう。

 

ニックフューリーの能力

本作の終盤でグラヴィクと対峙したニックフューリーは実はガイアでした。
そのころニックは病院でローディに化けたスクラル人を止めようとしていました。
私は最初、ニックがグラヴィクという、ある意味自分が作り出した脅威と向き合うのかと思ったので、ガイアになるまで気が付きませんでした。
ただ、この方法はニックの一番得意なやり方とも考えられます。
そもそもニックは自分から戦いに行く性格ではなく、チームの指揮や裏工作が得意です。
それこそ、ニックが大人買いしたアベンジャーズも世界を救いました。
なのでこの物語のラストは表で戦わずに裏で動くニックらしい最後だったと思います。
ただ、これは他のドラマシリーズにも言えることなのですが、本作も結局最後は戦いで終わらせました。
映画であればそれは大興奮のシーンになると思いますが、欲を言えばドラマならではの終わり方も観てみたいです。
ただ、特異なラストになった『シー・ハルク』の評価が良くないことを考えると、意外に多くの人が納得するドラマらしいラストを見つけるのは難しいのかもしれませんね。

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ローディについて

本作ではマリア・ヒルの最後やスクラル人に捕まっていたエヴェレット・ロスなど驚きの展開がありましたが、やはり1番はローディではないでしょうか?

ラストで助けられたローディは検査着を着ており、それが『キャプテン・アメリカ:シビルウォー』の時に来ていたものと一致していました。
これにより、ローディがスクラルに変わったのがシビルウォーで半身不随になって検査をしていた時なのではないか?という考察ができました。
そしてこの考察に対して不安と怒りをあらわにしている人も見受けられます。

確かにシビルウォー以降のローディがスクラルだった場合、インフィニティ・ウォーとエンドゲームのローディは本物じゃないですし、トニーの死も知らないことになります。
私も感情論だけで考えると、シビルウォー以降のローディがスクラルなのは複雑な思いだというのが本音です。
やはりトニーの死に際にローディがいなかったということになるのは、手放しで受け入れることは難しいです。

ただ、こうなっても説明がつくというのがフェーズ3です。
フェーズ3ではサノスが全宇宙の人口を半分に減らしました。
そしてその中には当然スクラル人も含まれていると思います。
そういう意味では、あの時点で人間とスクラル人の利害関係が一致していたと言えます。
だからこそ、ローディに成り代わったスクラル人のラーヴァもサノスを倒す戦いに加わったとも考えられます。
本作でもスクラル人がアベンジャーズを特に大きな脅威として認識していたことも語られていましたしね。

そして今後の物語を考えたメタ的な視点で言うと、正直トニーの死を知らないローディを観てみたいです。

フェーズ3で起きたトニーの死やサノスの襲撃は今やMCUのすべての人が知っています。
それはアベンジャーズのメンバーはもちろん、全世界の人間が知っています。
その中で一人、サノスの襲撃もトニーの死も知らない人間がいると、その人しか描けない物語があると思います。
そして今それをできるのはローディだけです。
空白の5年間に消えていた人とは比にならないくらい外の情報がありません。
そんな唯一無二のローディ視点を観てみたいという感じもあります。
ただそのための代償があまりにも重すぎるので、難しい部分ですね。

 

最後に

今回は『シークレット・インベージョン』についてお届けしました!
視聴者の評価はあまりよくない本作ですが、ウォルトディズニーカンパニーのボブ・アイガーCEOはマーベルの現状に満足していなく、今後は公開ペースを落とすとも言っていたので、これを機にそれぞれのシリーズがより洗練されたものになってほしいです!

最後までご覧くださりありがとうございました!