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実在したローマ教区のエクソシスト、ガブリエーレ・アモルト神父の著書『エクソシストは語る』をもとにした映画です。 上映時間は103分。
アモルト神父を演じるのはラッセル・クロウ。 数多くの作品に出てきた俳優ですが、意外にもホラー映画の主演はこれが初めてです。
ここから先は結末まで触れます。
モデルになったアモルト神父とは何者か
ガブリエーレ・アモルト神父は、2016年に亡くなるまでに16万件以上の悪魔祓いを行ったと言われています。
1990年には国際エクソシスト協会を設立しました。 エクソシストの訓練と支援を目的とした団体で、2000年までは会長も務めています。
なぜそんな団体が必要だったのか。 本作を観るとその背景が見えてきます。
アモルト神父とトーマス神父のバディ
本作でいちばんよかったのが、この2人です。
ラッセル・クロウ演じるアモルト神父は経験が豊富です。 一方、ダニエル・ゾヴァット演じるトーマス神父はエクソシストとしての経験がなく、訓練も受けていません。
序盤には、悪魔の存在そのものを否定する神父が出てきます。 エクソシストとして動くアモルト神父と、否定する側の対立が描かれる。 トーマス神父に知識がないのも、こうした空気が悪魔祓いをおろそかにしてきた結果なのかもしれません。 アモルト神父が協会を作ったのも、同じ背景があったからでしょう。
2人の関係は、師弟に近いものでした。 経験豊富な側と、そこから学ぼうとする熱心な側。 そのやりとりが印象に残ります。
特にトーマス神父の成長が大きい。 最初はラテン語が話せませんでしたが、アモルト神父の「ラテン語のほうが強力だ」という助言を受けて覚えます。 そして最後、アモルト神父を救う場面で、そのラテン語で悪魔祓いを行う。 学んできたものが試される場面で、それをきちんと生かしていました。
ホラーではなくアクションファンタジーだった
予告編の時点では、かなりホラー寄りに見えていました。 ラッセル・クロウはベテランの強面エクソシストに見えましたし、憑かれた少年はグロテスクでした。
ところが観てみると、ただのホラーではありませんでした。 あえて名前をつけるならアクションファンタジーホラーです。 むしろアクションファンタジーのほうが強い。
悪魔ものの定番、宙に浮いて振り回される人間や、抵抗に耐えながら祓うエクソシストは出てきます。 それでもホラーとしては弱かった。 壁を叩くポルターガイストや憑かれた少年は出てきますが、その程度です。
原因は舞台の狭さだと思います。 本作の舞台は廃教会で、終盤には地下の空間も出てきますが、ホラー的な出来事が起きるのは少年が寝ている部屋です。 これだけ狭いと、できることが限られます。 だから主な怪奇現象が壁を叩く音になってしまう。
その代わりに目立ったのがファンタジーです。 特に終盤、2人の神父と悪魔の対決では、火花で描かれた紋章が壁を走ります。 聖水で皮膚が焼けるとか宙に浮くといった、現実にありそうな範囲を越えている。 ホラーというより、ドクター・ストレンジのようでした。
終盤はホラーの要素がほぼ消えるので、途中から割り切って観られました。 それでも、あそこまで振り切るとは思っていませんでした。 純粋なホラーを求めていたので、そこは残念です。 トーマス神父の活躍も2人での除霊もかっこよかっただけに、ホラーの手触りを残したままやってほしかった。
家族の話が途中で終わっている
もうひとつすっきりしなかったのが、憑かれた側の家族です。
物語は、父親を事故で亡くした家族の息子が悪魔に憑かれるところから始まります。 そして序盤で、父親を失ったことで家族がばらばらになっていることが描かれる。 最初は、悪魔祓いを通してこの家族が元に戻る話なのだろうと思っていました。
実際には、悪魔祓いの最中に3人そろって車で逃げるところが最後の見せ場です。 問題を抱えた家族を被害者に置いたのだから、修復されるところまで観たかった。
ただ、これには事情も考えられます。 本作はアモルト神父の著書をもとにした作品です。 自伝や史実をもとにした作品では、本人が知り得ない部分を大きく脚色するのが難しい。
本作は教会の明るい面だけを描いてはいません。 考え方の違いも、性的虐待も出てきます。 過去に実際のスキャンダルが報じられてきたことを思えば、描かれたことを事実として受け取る人がいてもおかしくない。 そういう作品なので、アモルト神父とトーマス神父の視点を外れた先まで踏み込みにくかったのかもしれません。
それでも、冒頭で家族の溝を見せた以上は、きれいに埋めてほしかったというのが正直なところです。
知っていると分かりやすいキリスト教の要素
本作にはキリスト教の要素が多く出てきます。 私は映画から断片的に学んだ程度ですが、それでも予備知識がないと戸惑う場面があると思いました。 2つだけ補助線を引いておきます。
ひとつめが、冒頭でアモルト神父が審問を受けている場面です。
カトリックでは、悪魔祓いを勝手に行うことができません。 教会法の第1172条で、その土地の司教から特別な許可を得た司祭でなければ行えないと定められています。 許可を出す側も、信仰と知識と思慮と誠実さを備えた司祭にしか与えないことになっています。
同じ題材を扱った『死霊館』シリーズでも、許可が下りずに祓えないという場面が出てきます。 いざというときに動けないのは厄介ですが、そういう決まりになっています。
ふたつめが、終盤でアモルト神父に悪魔が憑いた場面です。
彼は、悪魔が自分を使って教会を壊すことを防ぐために、自ら命を絶とうとします。
聖書には、自分の体は神から預かったものであり、大切に保つようにという教えがあります。 そのため自死は重大に反する行いとされてきました。
ただし、現在のカトリックの教えでは、自ら命を絶った人が救われないとは考えません。 『カトリック教会のカテキズム』には、そうした人の永遠の救いについて絶望してはならないと書かれています。 強い苦しみや恐怖が、その人の責任を減じることがあるとも記されています。
それでも、司祭であるアモルト神父にとって、自死を選ぶことは重い決断だったはずです。 自分が犠牲になってでも教会を守る、という意志の表れでした。 そこを知っているかどうかで、あの場面の重さが変わります。
他にも宗教的な意味を持つ要素があり、気づくには相応の知識が要ります。 その意味では、少しハードルの高い作品です。 ただ、知らなくてもエンタメとしては十分に楽しめます。
続編はどうなったのか
本作は続きがありそうな終わり方をしていました。 実際、続編はソニーが承認しています。 ラッセル・クロウもアモルト神父役で戻る見込みです。
ただ、動きは止まっています。 スタジオの幹部が交代したことで話が進まなくなり、公開時期は決まっていません。 当初は3部作の構想もありました。
2026年8月の時点で、この状態が続いています。
ホラーとしては物足りず、バディものとしては良かった
純粋なホラーを求めて観ると、たぶん物足りません。 怪奇現象は壁を叩く音が中心で、終盤はファンタジーの対決になります。
それでも、この作品にはアモルト神父とトーマス神父がいます。 ラテン語を話せなかった青年が、最後に師を救う。 その一点で、103分を観る価値はありました。
ホラーが苦手な人でも入りやすい作品です。 続編が動き出したら、今度はもう少しホラーの手触りを残したまま、この2人を観たいと思っています。