『ヴァチカンのエクソシスト』ネタバレ感想・実在の神父はスクーターに乗ってやってくる

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ヴァチカンのエクソシストのアイキャッチ レビュー

こんにちは!シネマトレンドです。
皆さんは悪魔祓いの経験はありますか?
1回?2回?教えてくれてありがとうございます!
驚くことなかれ、本作のモデルになった実在のエクソシスト「ガブリエーレ・アモルト神父」の悪魔祓い回数はそんなものじゃありません。
今回はそんな実在のエクソシストであるアモルト神父をモデルに描いた映画『ヴァチカンのエクソシスト』のネタバレ感想をお届けします!

この記事の内容はYouTubeにも投稿しています。
動画では実写メインでレビューしているので、映像でご覧になりたい方はこちらをご覧ください!


ネタバレ感想の前に、簡単な概要をお届けします。

ヴァチカンのエクソシスト概要

本作は実在したローマ教区のエクソシストのガブリエーレ・アモルト神父の著書「エクソシストは語る」をベースに映画化した作品です。
アモルト神父を演じるのはグラディエーターや最近では『ソー:ラブ&サンダー』にも出演しているラッセル・クロウです。
これまで数多くの作品に出演しているラッセル・クロウですが、意外にも本作がホラー映画の初主演のようです。

このアモルト神父は2016年に亡くなるまでに、なんと16万件以上の悪魔祓いを行ったと言われています。
1990年には国際エクソシスト協会というエクソシストの訓練や支援を目的とした協会を設立して、2000年まで会長も務めていました。

そんなアモルト神父の悪魔祓いを描いた本作は、ホラー映画でありながら、アクションの要素をふんだんに盛り込んだ作品です。
1時間43分という短い尺ながら、作中の悪魔との対決は見ごたえがあります。

ここから先は『ヴァチカンのエクソシスト』のネタバレを含みます。
 

ネタバレ感想

バディムービー

アモルト神父とトーマス神父

本作はなんといってもアモルト神父とトーマス神父のバディがとてもよかったです。
ラッセル・クロウ演じるアモルト神父はさっき紹介した通り、悪魔祓いの経験が多い神父です。
一方でダニエル・ゾヴァット演じるトーマス神父はエクソシストとしての経験もなく、訓練もしていませんでした。
本作では悪魔の存在を否定する神父が序盤に登場しました。
エクソシストとして活動するアモルト神父と、悪魔の存在を否定する神父側の対立が描かれていました。
トーマス神父の悪魔祓いに関する知識が少ないのも、こういった悪魔の存在を否定する神父がいることがエクソシズムをお粗末にしていることに関係しているのかもしれません。
そして最初に紹介した国際エクソシスト協会をアモルト神父が設立したのも、こういった背景があったからなのかもしれません。
本作はこの2人の師弟関係というか、経験豊富なアモルト神父と、彼から学ぼうとする熱心なトーマス神父の関係がとても印象に残りました。
中でも特にトーマス神父は大きく成長していましたね。
最初はラテン語が話せなかったトーマス神父ですが、アモルト神父の
「ラテン語のほうが強力だ」
という助言を受けて、最後にアモルト神父を救う場面では覚えたラテン語で悪魔祓いを行っていました。
あの場面はこれまでアモルト神父から学んできたトーマス神父の力が試される絶好の場面で、それをうまく生かしたトーマス神父の姿はかっこよかったです。

 

アクションホラー

エクソシストをするアモルト神父

本作は予告編の時からホラーのような雰囲気が強かったです。
予告のラッセル・クロウはベテランの強面エクソシストのようでしたし、悪魔に取りつかれる少年はグロテスクでした。
そんなホラー感満載の映画を楽しみにしてきたら、意外にもただのホラーではありませんでした。
たとえるなら、アクションファンタジーホラーでしょうか。
むしろ、アクションファンタジーの印象が強かったとも思います。
悪魔系ホラー映画といえば、宙に浮いて振り回される人間や抵抗に耐えながら悪魔払いをするエクソシストなどがお決まりですが、本作でもそのような演出はたくさんありました。
ただ、その一方でホラーの要素が弱かったと思いました。
全くないわけではなくて、例えば壁をノックするポルターガイスト現象やそれこそ悪魔に取りつかれた少年は出てきますが、その程度で、他のホラー映画と比べると少なかったです。
そして前に言った通り、本作はアクション要素も強かったのですが、そのバランスが悪かったです。
その理由として考えられるのが舞台の小ささです。
本作は廃教会が舞台になっています。
終盤には地下の秘密基地みたいな場所も登場しますが、ホラー展開が起こるのは少年が寝ている寝室です。
この小さな舞台ではやれることが限られると思います。
そんなこともあってか、本作で起こる主な怪奇現象は壁をノックするくらいです。
一応終盤にクローゼットに閉じ込められることもありましたが、恐怖心をあおる怪奇現象としてはいまいちでした。
少年が急に眼を開けてそれとともに効果音を出すジャンプスケアもありましたが、それは一瞬驚かされるだけで持続的な恐怖を感じることはありません。
観客に対する恐怖をあおる演出の話をしましたが、作中の話では、登場人物に対して徐々に恐怖心を煽っていくことで精神的に疲弊させることができますが、本作ではその過程は詳細に描かれませんでした。
確かにポルターガイスト現象が少なくなる理由もわかります。
本作は悪魔祓いがメインになっており、映画尺も短いです。
そうすると、徐々に恐怖心を煽っていく演出を入れてしまうと尺が伸びてしまいます。
なので、”あくまで悪魔祓い”を中心に描いて、時間をかけて恐怖心を増大させていく演出は避けたのかもしれません。
ただ、そうした結果ホラー要素が弱くなってしまったのが残念です。
ホラー映画をあまり見ない人にとっては、ちょうど良い怖さの作品かもしれませんが、ホラー映画が好きな私にとっては物足りませんでした。

本作はホラー要素が弱かったのに対して、ファンタジー要素が目立っていました。
これはそこまで多くありませんでしたが、特に印象的だったのが終盤の悪魔との対決です。
2人の神父と悪魔の対決では火花で描かれた紋章が壁にほとばしるなど、ファンタジー的な演出がありました。
他の悪魔系ホラー映画では聖水で皮膚が焼けたり、宙に浮くような現実にありえそうなファンタジー要素はよくありますが、本作に登場した火花の紋章のような演出はホラー映画というよりむしろ、ドクター・ストレンジのようです。
本作は特に終盤からホラーの要素は無くなってきたので割り切ってみることができましたが、あそこまでファンタジーに振り切った演出には驚きました。

もともと私は純粋なホラー映画を求めていたので、恐怖心を煽る演出が少ないことや、終盤がファンタジーバトルになっていたのは残念でした。
ただ、終盤のトーマス神父の活躍や2人での除霊などはかっこよかったので、ホラー感を残したままやってほしかったです。

 

家族の心情描写

母と娘

もう一つすっきりしなかったのが、憑りつかれた家族です。
本作は父親を事故で亡くした家族の息子が悪魔に取りつかれたことで物語が始まります。
そこで少し残念だったのが、この家族が最後まで描かれなかったことです。
というのも、この家族は父親を亡くしたことでバラバラになってしまったことが序盤に描かれました。
最初はこの悪魔祓いを通して家族の仲を修復するのかな?と思ったのですが、実際には悪魔祓いのタイミングで3人そろって車で逃げるところが最後でした。
問題のある家族を被害者にしたので、悪魔祓いを通して家族を修復するところまで描いてほしかったです。
ただ、本作はアモルト神父の著書『エクソシストは語る』をベースに映画化した作品です。
このような自伝や史実を基にした作品では、知りえない情報を過度に脚色したり、追加することは難しいです。
例えば極端なたとえでは、アモルト神父が最初から廃教会の工事に同席していることになっていたり、すべての神父が悪魔の存在に肯定的になっていたりとかです。
特に本作では明るいだけの教会内部が描かれるわけではなく、考え方の違いや性的虐待など、暗い面も描かれています。
過去にはカトリック教会の性的虐待スキャンダルが報じられたこともあり、映画で語られたことが事実だととらえることも難しくありません。
そのようなこともあり、アモルト神父とトーマス神父という2人の視点を外れた後の家族の行く末は描かずに、ラストに安全が伝えられる程度にとどめたのかもしれません。
しかし、本作の冒頭で家族の溝が描かれたので、そこがきれいに完結しなかったのはもやもや感が残りました。

ただ、本作はアモルト神父の著書『エクソシストは語る』をベースにした映画です。そのため、アモルト神父に焦点を当てた作品になっていました。
なので、家族の描写は悪魔が登場するまでで、それ以降はアモルト神父とトーマス神父の悪魔祓いに視点を変更したのかもしれません。
しかし、本作の冒頭で家族の溝が描かれたので、そこをきれいに修復してあげて欲しかったです。

 

キリスト教の要素と分かりづらさ

アモルト神父と謎の女性

本作はキリスト教の要素が多く登場しました。
私は映画でキリスト教を断片的に学ぶにわかなのですが、もし何も知識がない人が観たら困惑するところがいくつかあったと思います。
例えば映画冒頭のアモルト神父が審問を受けている場面です。
ここでなぜ審問を受けているかというと、アモルト神父がバチカンの許可なく悪魔払いをしたからです。
通常、悪魔祓いは許可が必要なようで、例えば同じ悪魔祓いを扱った『死霊館』シリーズでも、許可が下りずに悪魔祓いをできないという場面が登場します。
今回はアモルト神父が許可なしに行ったため、審問を受けていたんです。
許可が必要というのは、いざというときに迅速に動けないのがネックですよね。

そして他にも、物語の終盤でアモルト神父に悪魔が憑りついた場面で、アモルト神父は悪魔が自分を利用して教会を崩壊させるのを防ぐために自ら命を絶とうとします。
聖書には「自分の体を大切にし、神聖に保つように」という教えがあります。
これに当てはめると自殺というのはこの教えに反すことになり、考え方によっては天国に行けなくなるというものもあります。
なので、アモルト神父が悪魔に取りつかれたときに真っ先に首をつって自殺を図ろうとしたのは、自分が犠牲になってでも教会を守ろうという強い意志の表れだったのです。

他にもいくつか宗教的な意味合いを持つ要素があり、それを知らないと理解するのが難しい場面などがあったと思いますが、そこに気が付くために相応の知識が必要になってくるので、その意味ではハードルが少し高い作品だと思いました。
ただ、エンタメホラーとしても十分楽しめるので、もっと深く作品を理解したいときは、勉強してみるのもいいかもしれません。

 

まとめ

ということで今回は『ヴァチカンのエクソシスト』についてお届けしました。
本作はホラーでありながら、謎解きやファンタジー要素のような楽しめる要素もたくさんあり、ホラーが苦手な人でも楽しめる作品でした。
続きがありそうな終わり方でしたし、続編の噂もあるようなので、続報が楽しみです。
最後までご覧くださりありがとうございました!